2013-03-13

グラナダ(スペイン)

現地に誰も知り合いいないし、どこ行っていいかもわからないのでとりあえず首都のマドリード行きのチケットを買う。
着いてみたみたところ言葉というか発音の聞き取りが難しい、スペイン訛りが全然理解できなくてかなり焦る(メキシコではかなり聞き取れていたので油断していた)。
時差を戻すのに2日くらい費やしたあとに電車で南部最大の都市セビーリャに行くものの、あまりの都会加減にがっかりして都市の中では比較的奥地にあるグラナダに行く。
町の中心部から少し離れた相部屋制ゲストハウスで地図をみていると相部屋の人が帰ってきた、なんでもオーストラリアの人だそうで
「町にいいバーがあるから今夜飲みにいこう、店員が地元の大学で短期語学コースをとってるからスペイン語コースの情報もきけるかもよ?」
と誘ってくれたのでヒマだし行かない手はない。
行って見るとえらくスペインらしくないアイリッシュパブで親子二人でやっているようだった、とりあえず情報収集がてら息子さんと話し始める。
どうやら短期コースには外国人用のスペイン語もあるらしい、しかも明日は学校でパーティーがあるから来れば生徒の日本人とも会えるとのこと(彼はそのうちの一人がお気に入りだったようで日本人つながりから紹介して欲しいっぽかった)。

翌日その学校主催のパーティーに3人で行った。
夏休み中で外国人生徒が多くて多国籍な雰囲気(謎に北欧人多し)、確かに日本人らしき人たちもちらほらいる。
しばらく3人でサングリアを飲んでいると日本人の人達から話しかけて来てくれたので、どさくさに紛れて店員さんにお気に入りの女性を息子さんに紹介したりする。
しかし話してる途中にその女性のボーイフレンドが来てどっかに連れて行ってしまった。。。がともあれ約束を守った自分の律義さに自己満足。
そして早速翌週からの語学コースに入学、クラスにはオランダ人が多くどうやら学校か何かの集団語学留学の模様。
あと特筆すべきは食堂で酒を出す、休み時間に生徒や先生問わず軽く一杯やっている。
ここで食事時間についてだが、飲む感覚も違えば食事の感覚も違うのは当たり前。
朝はみなさんまちまちらしいけど、お昼は14時以降で夕飯は21時以降がレギュラータイムのようだ。
しかもランチのセットドリンクが「水かビールかワイン」のパターンが多いからか15時過ぎは明らかに酔ってる歩行者が続出する、これはまさにカルチャーショック(お酒好きは同じスペイン語圏でもメキシコ以上だと思う)。
昼は定食をもりもり食べる、そして夜はバーで一杯頼むと付いてくるオカズ(タパス)目当てに何件もハシゴするのがグラナダスタイル。
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2013-03-14

グラナダ2(スペイン)

語学コースを受け始めて1週間、文法は大学やメキシコ滞在時にかなりやっていたのでそれほど問題はなく発音の違いにも慣れてくる。
住居も学校に貼ってあったルームメイト募集でなんと月15000円で発見する、ルームメイトはスウェーデンの人でグラナダ大学に通っていてスペイン語がペラペラだったのでかなり勉強になった。
しかも町には長期滞在の日本人も結構いるので定食屋(スペインではバル)の値段や日替わりメニューの内容、味等など様々な情報も入手できた、やはりいくら量が多くても肝心の味付けがあまりに大味だとつらいのでここは同胞の情報に勝るものはない。
そんな中で学校1ヶ月目の最終週に友人がモロッコ旅行に誘ってくれた。
授業料は月ごとの支払いだったので「翌月は学校は行かずもっとギターの勉強でもしようかな」と思って行く事に決めた。
そして一週間の苦行のようなモロッコ旅行も終わり、ギターでも習おうと思い早速先生を探し始めてみたのだがどうもなかなか知り合わない。
周りに音楽やっている人がいなかったというのもあるけど、単純にスパニッシュギター習うだけなら日本でもアメリカでもどこでも一緒なのでここまで来たからには「いかにも地元っぽい人の演奏に触れたい、できたら下手でもいいからジプシーの」という欲もあったりしてなかなか難航したので結局また語学コースに戻る事に。。。

そんなある日に朝学校へ行く途中の広場で友人に呼び止められた、この友人(日本人)は学校を1ヶ月で早々と辞めてほぼ毎日いつも同じ時間に同じ広場のカフェに来て昼くらいまで長居している。
「おはよう、眠そうだね」
「おはよう、いやーホント毎日いるね。朝9時の授業とか言って早いよな、ここはスペインだろ?まったく」
「まあオレは学校なくても早起きしちゃうなんだよね、酒飲めないから夜出歩かないし。ところでどう?たまにはサボってゆっくりしていかない?」
「そうねえ、朝からワインもありかも」
小一時間ほど取り留めのない話をしてると、友人の隣に知らないスペイン人中年男性がいきなり座ってきた。
「あれ、誰?知り合いでしょ?」
「話しかけちゃだめだよ、こいつめんどくさいから。すぐ帰らすからちょっと待って」
「そうなの?ヒマだから別にいいけど、会話の練習にもなるしね」
「だめだって、こいつ日本人におごってもらう事しか考えてないからさ。でもひとつ取り柄があってね、ギターめちゃくちゃうまいんだよね。そういやキミもギター弾くんじゃなかったっけ?」
「弾くよ。へー、この人ギタリストなんだ?ちょっと話していい?」
「でもおごっちゃだめだよ、また来るから」
といった展開で話し始める、なんでもフラメンコなら歌とギターとダンス全部できるらしく、各自日本人の生徒もいたようだ。
とりあえず「30回一括払いでレッスン始めないか?5回分お得だよ」となにと比べてお得なのか分からないオファーを何度も掛けてくる、まあ語学慣れにも良さそうだしとりあえず体験レッスンをすることにした。

2013-03-14

グラナダ3(スペイン)

往古アラブの栄華を今に伝える文化遺産アルハンブラ宮殿行きバスが出ている停留所からは全く逆方向の危険なジプシー居住区サクロモンテ行きのバスに乗り10分。
洞窟を掘った部分に壁を嵌め込んだ部分が真白に塗られた家々が見えてくる。
昔グラナダに移住してきたジプシーは土地がないから洞窟を家にしたらしくその名残が今も残っている。

ちなみにレッスン場はその付近に住んでいた日本人の友人宅。
この家もまたいわくつきで、なんでも空き家をマノロが勝手に直して所有して賃貸しているというなかなかキワドイ場所(友人は一階に住んでてレッスンはその上の掘っ立て小屋みたいな場所)、まず一階の友人を訪ねると
「あれどうしたの?こんなとこまで珍しい!」
「マノロにフラメンコ習うんだよ」
「え?あいつに習う。。。大丈夫?とりあえずあいつがメンドくなったら呼んでね、下にいるから」
と、早くも彼らの中でのマノロの立ち位置の低さを匂わせるなんともいいようのない意見をもらう。
とにかく二階に上がりレッスンスタート、まずは語学勉強も兼ねて歌を教えてもらう事にしたけどそのレッスンがすごかった。。。
いきなりギター弾きながら一節歌って
「よし、やってみろ」
「え?一回じゃ覚えられないよ」
「わかった、もいっかいやるから。どうだ?よし歌ってみろ」
「だからムリだって、せいぜい歌詞くらい書いてよ」
「え、ムリだよ。だってオレ文字書けねえから」
多分自分の人生で初めてリアルに文盲に接した瞬間である、世界は広い。。。
しかしこれでは始めの10分でレッスン終了してしまうのでゆっくり歌ってもらってそれを書き取る事にする。
「なんだ、話すだけでなく、文字も書けるのか?日本人は頭いいところが好きなんだ」
しかし何度聞き取りしてもわからない単語もあったけど、1ヶ月でも学校に行って耳を馴らしていたのが効いたのか大部分を書き取り晴れてレッスンを開始。
ひたすら少し高すぎるくらいのキーで同じ節を何度も歌う、音程よりもリズムの細かい修正が多いのが面白い。

それから週一回くらいで2ヶ月ほど通ったある日、1時間のレッスンなのに40分くらいで
「今日は疲れた(本音は飽きた)、早く終わっていい?」
とか病気でもないのに言うから、残り時間はギターを弾いてもらう事にしたら
「おれのギター聞いた事ないんだっけ?言っとくがおれは歌手だが本職はギタリストだからな」
と早速嬉しそうに弾き始めた。
この時の演奏が今まで聞いたことないくらいの凄い音圧(その後世界的にもトップクラスのフラメンコギター奏者をプライベートな状態で聞いた時でさえこの時ほどの音圧は感じられなかった)だったので思わず
「ねえ、思いっきり力入れて弾いても一音すらそういう音出ないんだけど、なにが違うのかな?」
「やっぱ食い物だな、あとお前は指は動くけど日本人だしさ、フラメンコなんて分かんないだろ?」
と今まで払い続けたレッスン代の意義を根本から覆すような意見をサラッと言い
「ところでおれギターうまいだろ?ギターレッスンも受ける気ないか?」
と最高のオチまでつけてどこまでも期待に応えるマノロであった。